何か記念に書いてください
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その部屋は、一面の赤に覆い尽くされている。天井から床、家具の全てが赤。1歩中に入ると目が痛くなってしまう光景に、俺は思わず眉を顰めた。そもそも、何故俺がここに居るのか。フリーターである俺は、新聞に掲載されていた求人欄の1つの記事に目を留める。給料は破格。短期のバイト。この仕事をすれば、4ヶ月は暮らせる。贅沢は出来ないだろうが、食うには困らないだろう。直ぐに机の上にある携帯を取り、電話を掛けた。
トゥルルル・・・・・・トゥルルル・・・・・・「・・・・・・はい」2度目のコールが終わり、3度目のコールで女が出た。声には覇気がなく、印象的には暗い女、と言った所だろうか。
「…… あぁ、短期アルバイトの申込みですか」言い終わらないうちに女はチッと舌打ちした。応対の口調も急に粗略になる。新聞に求人を掲載しているといえど、まともな会社ではなさそうだ。「仕事の前に確認することになってるんで訊くんだけど、 今罹っているの病気は?友達と注射回し打ったりは?金属アレルギーは?・・・・」面倒だったが、適当に相槌を打った。質問の内容から察するに、いわゆる「治験」のアルバイトなのだろう。気味は悪いがカネの為だ。「…あー、そう。 じゃあ、今晩9時、大町駅東口の第二コインロッカーに。 一秒でも遅れたら、この話は無かったということで」俺の返事も待たずに、女は受話器を叩き切った。
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