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- あくたがわりゅうのすけ
或日(あるひ)の暮方の事である。一人の下人が、羅生門(らしやうもん)の下で雨やみを待つてゐた。
 廣い門の下には、この男の外(ほか)に誰もゐない。唯、所々丹塗(にぬり)の剥げた、大きな圓柱(まるばしら)に、蟋蟀(きり/″\す)が一匹とまつてゐる。羅生門(らしやうもん)が、朱雀大路(すじやくおおぢ)にある以上(いじやう)は、この男の外にも、雨(あめ)やみをする市女笠(いちめがさ)や揉烏帽子が、もう二三人(にん)はありさうなものである。それが、この男(をとこ)の外(ほか)には誰(たれ)もゐない。
 何故(なぜ)かと云ふと、この二三年、京都には、地震(ぢしん)とか辻風とか火事とか饑饉とか云ふ災(わざはひ)がつゞいて起つた。そこで洛中(らくちう)のさびれ方(かた)は一通りでない。舊記によると、佛像や佛具を打砕(うちくだ)いて、その丹(に)がついたり、金銀の箔(はく)がついたりした木を、路ばたにつみ重ねて、薪(たきぎ)の料(しろ)に賣つてゐたと云ふ事である。洛中(らくちう)がその始末であるから、羅生門の修理(しゆり)などは、元より誰も捨てゝ顧(かへりみ)る者がなかつた。するとその荒(あ)れ果(は)てたのをよい事にして、狐狸(こり)が棲む。盗人(ぬすびと)が棲む。とうとうしまひには、引取(ひきと)り手のないし人を、この門へ持つて來て、棄てゝ行くと云ふ習慣(しふくわん)さへ出來た。そこで、日の目が見えなくなると、誰でも氣味(きみ)を惡るがつて、この門の近所(きんじよ)へは足(あし)ぶみをしない事になつてしまつたのである。
 その代り又鴉(からす)が何處(どこ)からか、たくさん集つて來た。晝間(ひるま)見(み)ると、その鴉が何羽(なんば)となく輪を描いて高い鴟尾(しび)のまはりを啼(な)きながら、飛びまはつてゐる。殊に門の上の空が、夕燒(ゆふや)けであかくなる時(とき)には、それが胡麻(ごま)をまいたやうにはつきり見えた。鴉(からす)は、勿論、門の上にあるし人(しにん)の肉を、啄みに來るのである。――尤も今日は、刻限(こくげん)が遲(おそ)いせいか、一羽も見えない。唯、所々(ところどころ)、崩れかゝつた、さうしてその崩(くづ)れ目に長い草のはへた石段(いしだん)の上に、鴉(からす)の糞が、點々と白くこびりついてゐるのが見える。下人(げにん)は七段ある石段の一番上の段(だん)に洗(あら)ひざらした紺(こん)の襖(あを)の尻を据ゑて、右の頬に出來た、大きな面皰(にきび)を氣にしながら、ぼんやり、雨(あめ)のふるのを眺(なが)めてゐるのである。

2006年03月11日 (土) 13時53分 No.170

Re: - なつめそうせき
文章うまいっすね!

何せ我輩は猫でありますから、名前はまだないんでございます。

2006年03月17日 (金) 00時07分 No.171

Re: - nnnnnnn
ooooooooooooooooo

2006年03月21日 (火) 23時38分 No.172



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