[ドラゴン〜世界の真龍大全〜] |
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[ドラゴン〜世界の真龍大全〜]
世界の終りに現れる竜・「黙示録の赤い竜」:キリスト教を信仰するヨ―ロッパの国々では、殆どの場合、ドラゴンは「悪の象徴」だと考えられて居る、彼等は悪魔に譬えられる他、場合に依っては悪魔其の物である邪悪な存在で、うら若い女性を攫ったり、家畜を喰い殺したり、人間を毒や炎の息で焼き殺す等、人間世界に害を与えるのだ。其れではキリスト教社会で、是程迄ドラゴンが恐れられて居るのは何故か?、其の理由の一つが、キリスト教の教典である『新約聖書』に登場して居るドラゴンに在る。一般的に「黙示録の赤い竜」と呼ばれて居る此のドラゴンは、キリスト教の神話に措ける悪の権化、サタンが変身したドラゴンだと考えられて居る。「黙示録の赤い竜」は正式な名前ではなく、所謂通称だ、キリスト教の聖典『新約聖書』の一編である『ヨハネの黙示録』には「AGREATREDDRAGON」と書かれて居るだけなのだが、其れが「黙示録の赤い竜」と呼ばれて居るドラゴンの事だ。因みに此の『ヨハネの黙示録』とは新約聖書に収録された複数の書物の内の一つで、キリストの直弟子の一人「聖ヨハネ」が、神から告げられた未来の出来事を書き記したと言う設定で書かれて居る、其処には世界が終りを迎え、キリスト教徒が神に依って救済される様子が書かれて居る。此の竜の躯は火の様に赤く、冠を被った七つの頭が在り、其れ等には合計で十本の角が生えて居る。又、聖書の文書には特に描写されて居ないが、後世に書かれた多くの絵画では、蝙蝠の様な翼を生やした姿で書かれる事が多い。しかし、詳しく説明される外見の一方で、此のドラゴンがどの様な力を持って居る描写した場面は少ない。僅かに、口から大量の水を吐出してキリストの母「聖母マリア」を思しき女性を押流そうとしたり、尻尾の一振りで天に輝く星を三分の一も叩き落したり、口から悪い霊魂を呼出したと言う記述が在る位だ。[『黙示録』に於ける赤い竜]、黙示録の赤い竜は『ヨハネの黙示録』の中盤、二十二章中の十二章に初めて登場し、キリスト教の信者や天使達に対して様々な妨害行為を仕掛けて居る。聖母マリアがキリストを身籠った後、天(天国)に現れた黙示録の赤い竜は、星の冠を被った妊婦から産れる子供を食べ様と待構えて居た。何故なら、此の子供は鉄の杖を持ち、全ての国々の民を治める筈だったからである。言う迄も無い事だが、此の子供とは、キリスト教の救世主、イエス・キリスト教の事であり、母親とは聖母マリアの事だ。しかし産れた男の子は直に神の元に引き上げられた為、ドラゴンの計画は失敗してしまう。其処でドラゴンは、子供の母親である聖母マリアを狙おうとする。そうして後、空でドラゴンと大天使「ミカエル」が率いる転進の軍団の戦いが行われた。ドラゴンは此の戦いに負け、地上へと堕とされてしまう。しかし、地上へ落ちても、ドラゴンの執念は衰えなかった。ドラゴンは、神の作った避難所を目指して逃げる聖母マリアを追うが、神に護られ、翼を与えられた聖母マリアを取逃がしてしまう。聖母マリアとキリストを取逃がしたドラゴンは、彼女の子供達と残り全て、詰りは世界中の人間と敵対する事を誓った。ドラゴンは先ず、新しく海から出現した一体の獣に、自分の力と権威を授けた。十本の角と七つの頭を持ち、熊の足と獅子の口を持つ此の化物こそ、「黙示録の獣」であり、我々が良く耳にする「獣の数字666」とは、此の獣の事を示す数字なのである。そうしてドラゴンと黙示録の獣は地上を支配し、人間達に自分を祟拝させた。是に怒った神は、獣と其の信奉者達に罰を下した。こうして獣は滅ぼされ、ドラゴンは千年間封印される事に成ったが、しかし『ヨハネの黙示録』には、一〇〇〇年の時が過ぎるとドラゴンは再び解放され、地上に悪徳を広めて回ると予言されて居る。[何故ドラゴンはキリスト教の敵に成ったか?]キリスト教では、ドラゴンは「神と敵対する悪魔」だと言う事に成って居る。最初に説明した通り、其の理由の1つが、此の「黙示録の赤い竜」である事は間違いない。聖書に登場したドラゴンの正体が、キリスト教の悪の権化「サタン」だと信じられたので、ドラゴンも討伐されるべき悪の存在とに成ったと言う訳だ。最も、神とドラゴンが対立すると言う考え方が出来たのは、キリスト教が始めてではない。キリスト教が誕生した中東の国のイスラエルの近くには、蛇や鰐等、爬虫類の姿をした怪物と神々が戦う神話が数多く残って居る。又キリスト教成立前から存在した『旧約聖書』でも、黙示録の赤い竜が描かれる依り遥か昔から、蛇の様な怪物「レヴィアタン」が登場して居る。キリスト教の聖典には、キリスト教徒専用に作られた新しい聖書『新約聖書』と、元々ユダヤ教と言う宗教の為に作られた『旧約聖書』の2つが在るが、黙示録の赤い竜が登場する『ヨハネの黙示録』は、『新約聖書』の一部で、対して怪物レヴィアタンが登場するのは『旧約聖書』である。詰りレヴイアタンは、少なくとも黙示録の赤い竜依り五百年以上昔から知られて居た事に成る。[赤い竜の頭が七つ在る理由]黙示録の赤い竜が登場する『ヨハネの黙示録』は、キリストの死から七十〜百年後に書かれたと考えられて居る。此の頃キリスト今日はヨ―ロッパに進出し始めたが、ヨ―ロッパやイスラエルを支配するロ―マ帝国に追害を受け、地下の墓地等で秘密教団の様にひっそりと活動して居た。抑生前のキリストを十字架に張り付けて処刑をしたのはロ―マ帝国からイスラエルに派遣されて居た総督であり、教祖を殺されたキリスト教徒にとって、ロ―マ帝国は「宿敵」だと言っても言過ぎではないだろう。黙示録の赤い竜は七つの頭に十本の角を持つが、此の外見はロ―マ帝国と密接に関係して居ると言う。現在の定説では、実は赤い竜の七つの頭は、ロ―マ帝国を支配して来た七人の皇帝を意味して居ると言う事に成って居る。そして十本の角は、西暦六八年にロ―マ帝国で内乱が起きた時に乱立した十一人の皇帝の内、正当な皇帝と成ったガルバ帝を除く十人を現して居ると言うのだ。キリスト教徒はロ―マ帝国の支配を嫌って居たが、大っぴらに帝国と批判すれば罪は免れない。彼等は支配者への批判を竜の姿に封じ込め、聖典として語り継いだのである。余談だが、『新約聖書』完成から約三百年後、キリスト教徒は追害にも負けず、ロ―マ帝国内に大量の信徒達を有する様に成った。其の当時のロ―マ皇帝テオドシウス一世は、遂にキリスト教徒を、ロ―マ帝国に公式に祟拝する唯一の宗教「国教」に認定する。ロ―マ帝国は、自国の皇帝達をモンスタ―扱いした宗教を自ら認めたのである。[竜退治の天使ミカエル]天界での戦いに於いて、默示録の赤い竜を倒し、地上へ堕とした天使「ミカエル」は、多数居る天使達の中で、最も偉大な天使だ。此の伝承から、ミカエルは主に鎧を着て剣を持った姿で描かれ、兵士や軍の守護者として信仰された。『ヨハネの黙示録』でのミカエルのドラゴン退治は、キリスト教徒の宗教画家にとって格好の題材に成って居り、時代を問わず幾つ物作品が作られて居る。又、ミカエルはキリスト教の伝説に登場する竜の退治の英雄「聖ゲオルギウス」の守護天使に認定されたり、都市の守護聖人として人々を害悪から守る役目を与えられて居る。ミカエルは偉大なだけではなく、大変人気の在る天使なのだ。キリスト教徒のドラゴン狩り「ゲオルギウスのドラゴン」:黙示録の赤い竜の赤い竜でも解説した様に、キリスト教に於けるドラゴンは、悪の象徴とされるのが一般的だ。此の為、キリスト教の伝説には「キリスト教の使者が、信仰の力でドラゴンを退治する」物語が幾つも在る。そんなキリスト教徒に依るドラゴン退治の伝説の中で特に有名なのが、聖ゲオルギウスと言う騎士に依るドラゴン退治の物語だ。此のドラゴンは
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